なぜ自宅の登記住所は「バレる」のか

会社を設立する際には、本店所在地を登記する必要があります。
国税庁の法人番号公表サイトでは、「商号または名称」「本店または主たる事務所の所在地」「法人番号」の基本3情報が公表されています。
会社名や法人番号などから検索すれば、登記されている本店所在地を確認できます。
たとえ、Googleで会社名を検索してもほとんど情報が出てこないような会社であっても、この点は変わりません。
「登記情報提供サービス」を利用すれば、有料ではあるものの、インターネット上で会社の登記情報を確認できます。
一時利用であれば、事前の継続的な利用登録をせず、クレジットカード決済で利用することも可能です。
法務局の窓口で、登記事項証明書を取得することもできます。
つまり、登記された住所は、検索に強い会社かどうかにかかわらず、そもそも「誰でも知り得る情報」だということです。
さらに、住所をGoogleマップなどで検索すれば、一戸建てなのか、マンションなのか、オフィスビルなのかまで、写真で確認できる場合があります。
自宅住所での法人登記は、「バレるか、バレないか」ではなく、いつ誰に見られてもおかしくないという前提で考える必要があります。
代表者の住所を非表示にできる制度もある

2024年10月から、一定の要件を満たす株式会社では、代表取締役等の住所の一部を非表示にできる「代表取締役等住所非表示措置」が始まっています。
この制度を利用すると、登記事項証明書や登記情報提供サービスに表示される代表者個人の住所は、市区町村までの表示になります。
ただし、この制度で非表示にできるのは、代表者個人の住所の一部です。
自宅を会社の本店所在地として登記している場合、会社の本店所在地そのものが非表示になるわけではありません。
「代表者の住所を非表示にすれば、自宅登記でも住所が分からなくなる」という制度ではないため、混同しないよう注意が必要です。
制度を利用する場合は、自社が要件を満たしているかも含め、司法書士などの専門家へ確認することをおすすめします。
自宅住所が公開されることで起こり得ること

自宅住所を法人登記に使用するリスクは、単に「自宅だと知られる」ということだけではありません。
実際にビジネスポートへ相談に来られた方の中には、自宅住所を会社の所在地として公開していたところ、知らない人が訪ねてきたという方もいました。
事業上の問い合わせや営業目的であっても、自宅へ突然来られることは大きな不安につながります。
特に、一人で事業を行っている方や女性の起業家、ご家族と同居している方は、事業上の住所と生活の場が同じになるリスクを、設立前に考えておく必要があります。
ホームページやSNS、ネットショップなどで情報発信を続けるほど、会社名、代表者名、自宅住所が結び付く可能性も高くなります。
「バレる」ことは、信用の問題でもある

自宅住所が公開されることのリスクは、プライバシーや安全面だけではありません。
もう一つ見落とされがちなのが、取引先から見た会社の印象です。
取引を始める前に、相手の会社名や所在地をインターネットで検索する方もいます。
住所を地図で調べ、どのような場所に事業拠点があるのかを確認することもあります。
もちろん、自宅やマンションを本店所在地にしているという理由だけで、会社の信用が決まるわけではありません。
自宅を拠点に、堅実な事業を行っている会社も数多くあります。
一方で、ホームページに記載されている事業内容や会社規模と、住所から受ける印象が大きく異なる場合には、「実際にはどのような体制で事業を行っているのだろう」と疑問を持たれる可能性があります。
自宅住所での登記が持つリスクは、「バレて困る」ということだけではありません。
バレたときに、相手からどのように見られるかという点にもあるのです。
自宅で法人登記してもよいケース

自宅での法人登記が、すべての方にとって問題になるわけではありません。
次のような方にとっては、初期費用や毎月の固定費を抑えられる合理的な選択肢です。
●自宅住所が公開されることを理解している
●持ち家、または法人登記や事業利用が認められている物件である
●来客や対面でのクレーム対応が発生しにくい事業である
●同居する家族も住所が公開されることを理解している
●取引先に、自宅を事業拠点として説明できる
一方で、自宅住所を公開したくない方、ご家族と同居している方、不特定多数の顧客と取引する方には、バーチャルオフィスやレンタルオフィスも選択肢になります。
大切なのは、自宅登記を一律に避けることではありません。
住所が公開されることによるリスクを理解し、自分の事業や生活環境に合っているかを判断することです。
バーチャルオフィスに変えれば、安心とは限らない

「それなら、バーチャルオフィスに変えれば安心」と考える方も多いと思います。
自宅住所を公開しないという点では、バーチャルオフィスは有効な選択肢です。
ただし、バーチャルオフィスであれば、どの施設を選んでも同じというわけではありません。
バーチャルオフィスの住所を検索すると、運営会社名や同じ住所を使用している法人が表示され、「住所を提供するサービスの所在地だ」と分かる場合があります。
帝国データバンクの調査によると、渋谷区のあるビルの一室だけで、過去5年間に3,000社を超える法人登記が集中していた事例も、Yahoo!ニュースで報じられています。
バーチャルオフィスは、複数の事業者が同じ住所を利用するサービスです。そのこと自体に問題があるわけではありません。
ビジネスポートでも、複数の契約者が同じ施設の住所を利用しています。
ただし、一室に3,000社を超える法人登記が集中しているとなれば、実際に3,000社がその部屋で事業を行っているわけではなく、住所を提供することに特化した施設であると推測されやすくなります。
住所貸し型のバーチャルオフィスを利用していること自体が、その会社の信用を否定するものではありません。
住所利用だけで十分な方にとっては、費用を抑えられる合理的な選択肢です。
一方で、取引先からの見え方や事業拠点としての説明のしやすさを重視する方は、料金だけでなく、次の点まで確認した方がよいでしょう。
●施設や運営会社の実態を確認できるか
●受付スタッフが常駐しているか
●郵便物や書留、宅配便を受け取ってもらえるか
●来客への対応があるか
●会議室や作業スペースを利用できるか
●必要になったときに、実際の事務所へ移行できるか
大切なのは、同じ住所を何社が利用しているかだけで判断することではありません。
施設が実際に運営され、郵便物や来客に対応できる体制があるか、住所を事業拠点として説明できるかを確認することです。
「隠す」より「バレても恥ずかしくない」を選ぶ

法人登記した住所は、完全に隠し通せるものではありません。
だからこそ、バレることを前提に、堂々としていられる住所を選ぶという発想も必要です。
大切なのは、住所を「隠すこと」ではなく、その住所を見られたときに、事業拠点としてきちんと説明できるかどうかです。
一つの目安になるのが、行政からの認定や、対外的に説明できる施設としての実績があるかどうかです。
たとえば、幕張ビジネスポートは、千葉市の「イノベーション拠点認定施設」として、千葉市の公式サイトにも掲載されています。
千葉市のページには、幕張テクノガーデン内にあることに加え、レンタルオフィス、シェアオフィス、バーチャルオフィス、貸会議室、受付体制などの施設情報も掲載されています。
第三者の公式ページから、施設の所在地や実在性、サービス内容を確認できることは、住所について説明する際の材料になります。
また、幕張ビジネスポートには、1名用から15名用まで、実際に仕事ができるレンタルオフィスがあります。
バーチャルオフィスとして契約している方も、外から見て「バーチャルオフィス契約なのか、実際に個室を利用しているのか」が分かるわけではありません。
契約者がどのプランを利用しているかは、一般的な検索で確認できるものではなく、施設から外部へ公表することもありません。
事業が成長し、専用のスペースが必要になった場合には、住所を変えずにレンタルオフィスへ移行することもできます。
隠すのではなく、見られても事業拠点として説明できる。
これが、本当の意味でのリスク対策だと考えています。
ネットショップを運営する方は、特に注意が必要

ネットショップなどの通信販売では、特定商取引法に基づき、原則として事業者の名称、住所、電話番号などを表示する必要があります。
法人がインターネット上で広告を行う場合は、代表者または通信販売に関する業務責任者の氏名も表示事項に含まれます。
つまり、法人登記とは別に、住所を公開する場面が生じる可能性があるということです。
一定の条件を満たした場合には、広告上の住所や電話番号などを省略できることもあります。
ただし、その場合は、消費者から請求があった際に情報を遅滞なく提供することを表示し、実際に提供できる体制を整えておく必要があります。
自宅住所を特定商取引法に基づく表記に使用することに抵抗を感じ、バーチャルオフィスを検討する方は多くいます。
ネットショップを運営する予定がある方は、法人登記だけでなく、特定商取引法の表示にどの住所を使用するのかも、設立前に考えておきましょう。
利用するネットショップサービスによっては、独自の登録条件を設けている場合もあるため、バーチャルオフィスの住所を使用できるかも事前に確認することをおすすめします。
登記住所は、後から変更すると手続きが増える

自宅で法人登記をした後、事業が軌道に乗ってから住所を変更することもできます。
ただし、本店所在地を変更する場合は、法務局での変更登記に加えて、税務署や自治体、年金事務所、金融機関、取引先などへの届出や連絡が必要になる場合があります。
ホームページ、名刺、封筒、請求書、契約書などに記載した住所も、一つひとつ変更しなければなりません。
また、賃貸マンションやアパートなどの居住用物件では、賃貸借契約や管理規約によって、事業利用や法人登記が制限されている場合があります。
法人登記の手続きができることと、大家や管理会社から事業利用を認められていることは別の問題です。
賃貸物件を本店所在地にする場合は、契約書や管理規約を確認し、不明な点は管理会社や所有者へ確認しておきましょう。
だからこそ、最初にどの住所で法人登記するかは、思っている以上に重要な選択です。
自分のステージに合った選び方

住所選びで大切なのは、現在の事業規模だけでなく、今後、事業がどのように変化していくかを見据えることです。
ステージ①:起業準備中・事業開始直後
来客もなく、売上もまだ安定していない段階です。
この時期は、初期費用や毎月の固定費を抑えることを優先しても構いません。
自宅住所の公開に問題がなく、物件の契約上も法人登記が認められているのであれば、自宅登記も合理的な選択肢です。
バーチャルオフィスを選ぶ場合は、将来的に住所を変えずにシェアオフィスやレンタルオフィスへ移行できるかを確認しておくと安心です。
ステージ②:事業が軌道に乗り始めた

打ち合わせや郵便物が増え、対外的な見え方を意識し始める段階です。
受付スタッフが常駐し、来客対応、書留や宅配便の受け取り、会議室の利用などができる施設を検討するタイミングです。
ステージ③:毎日使える専用スペースが必要になった
スタッフが増えた、自宅では仕事に集中できなくなった、顧客情報や書類を保管する場所が必要になったという段階です。
専用の個室を利用できるレンタルオフィスへの移行を検討しましょう。
同じ施設内で移行できれば、登記住所を変える手間を抑えられます。
ステージ④:さらにスケールして貸事務所が必要になった

人数が増え、自社専用の広いスペースが必要になった段階です。
ただし、貸事務所には、敷金や保証金、仲介手数料、内装工事などの初期費用がかかります。
入居後も、受付、郵便物、清掃、設備管理などを自社で行わなければならない場合があります。
いきなり貸事務所を借りるのではなく、バーチャルオフィスやレンタルオフィスから始め、事業の状況に合わせて段階的に移行することも現実的な選択です。
まとめ
自宅を会社の本店所在地として法人登記すれば、その住所は公開情報になります。
法人番号や登記情報を通じて本店所在地を確認できるため、「自宅の法人登記はバレるのか」と悩むよりも、公開されることを前提に住所を選ぶ必要があります。
●会社の本店所在地は、法人番号公表サイトや登記情報から確認できる
●代表取締役等住所非表示措置を利用しても、会社の本店所在地までは隠れない
●自宅に知らない人が訪ねてくるなど、安全面のリスクも考える必要がある
●自宅登記は、住所公開を理解し、物件の条件に問題がなければ合理的な選択肢になる
●バーチャルオフィスを選ぶ際は、料金だけでなく、住所を検索されたときの見え方や施設の運営体制も確認する
●ネットショップを運営する場合は、特定商取引法に基づく表示も考えておく
●将来、住所を変えずにシェアオフィスやレンタルオフィスへ移行できるかも重要
大切なのは、住所を完全に隠そうとすることではありません。
見られても、事業拠点としてきちんと説明できる住所を選ぶことです。
ビジネスポートでは、幕張・横浜・竹の塚・長野の各拠点で、バーチャルオフィス、シェアオフィス、レンタルオフィスを提供しています。
法人設立前に住所の選び方で迷っている方や、自宅登記からの移転を検討している方は、内覧時に現在の事業内容や今後の予定も含めてご相談ください。
▼内覧予約はこちらから
https://www.mtg-mbp.co.jp/previewform
この記事を書いた人
斎藤陽子|ビジネスポート統括マネージャー
ビジネスポートの開設当初から運営に携わり、現場経験は20年以上。バーチャルオフィスの導入や料金体系の再設計により、年間約1,000万円の赤字を抱えていた施設を黒字化し、幕張拠点を約590坪の規模まで拡大してきました。
現在は、幕張・横浜・竹の塚・長野の4拠点を統括。施設運営をはじめ、サービスや料金体系の設計、空間デザイン、内装・家具の選定、収益計画まで一貫して担当しています。
日々寄せられる契約相談や、郵便物・来客への対応など、サービスオフィスの現場で培ってきた経験をもとに執筆しています。
参照リンク
・国税庁「法人番号公表サイト」
https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/
・登記情報提供サービス
https://www1.touki.or.jp/
・法務省「代表取締役等住所非表示措置について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html
・消費者庁「特定商取引法ガイド・通信販売」
https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/
・千葉市「イノベーション拠点認定施設」
https://www.city.chiba.jp/keizainosei/keizai/sangyo/ninteishisetsu.html
・Yahoo!ニュース「ビル1室で3千社起業 経営実態は?」
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6587492